私は今さら、年上の威厳というやつを見せつけようと必死になった。

「斉藤くん、色々とご迷惑を掛けてすみませんでした。もう大丈夫ですから降ろして下さい」

背筋を伸ばして斉藤くんを、真っ直ぐに見据える。

「……ここで?」

「ええ、ここで」

返事をすると、斉藤くんはクスッと小さく笑った。

「止めておいた方がいいと思いますよ」

「何故? 私はもう大丈夫です。だから運転手さんに車を停めるように言って下さい」

本当はちっとも大丈夫じゃなかったけれど、これ以上、斉藤くんに圭吾さんとのことを探られるのは嫌だった。

けれど私の気持ちを知らない斉藤くんは、さらに大きな笑い声を上げた。

「プッ!あはは!」

おかしなことなんて言っていないのに、どうして笑うの?

お腹を抱えて笑う斉藤くんを見つめると、視線が合った。

「無理ですよ」

「無理?」

「はい。だって今は高速を走っているから、ここで車を停めるのは無理です」

「……!?」

折角、威厳を見せつけようとしたのに大失敗。

力が抜けた私は、ベッドのようなフカフカなシートに深く座り込んだ。

もう、どうでもいいや……。

今頃になって疲れを感じた私は、心地よいリムジンの揺れに身を任せるとゆっくりと瞳を閉じたのだった。

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