「忘れ物をしたのを思い出して戻ってきたんだ。で? まだ仕事終わらないのか?」

「実は私がミスをしてしまって……」

私の報告を受けた清水部長は、隣のデスクのイスを引き寄せると腰を下ろす。そして少し顎を上げると、ネクタイの結び目に指を絡ませた。骨ばった指先が左右に揺れて、ネクタイが緩む。

うわぁ。なんだか色っぽい……。

男の色気を感じる仕草に思わず見惚れていると、すぐに指示が飛んできた。

「そうか、じゃあ、すぐに訂正して」

「は、はい。」

ハッと我に返った私は、慌ててパソコンに向き合う。すると、清水部長は一緒に残業をしていた斉藤くんにも、指示を出した。

「それから、斉藤はもう帰っていいよ。お疲れ」

ええ~!! そんなぁ~!

清水部長とふたりきりなんて、緊張しちゃう! お願いだから斉藤くん、私をひとりにしないで~!

心の中で悲鳴を上げてみても、残念ながら斉藤くんには届くはずもない。手早く帰り支度を整えた斉藤くんは席を立つと、清水部長に向かって頭を下げた。

「それでは、お先に失礼します」

「お疲れ」

ああ、本当に帰っちゃうんだ……。

恨めしげに斉藤くんを見つめていると、パチリと視線が合った。

「お手伝いできずにすみません。お先に失礼します」

後輩の斉藤くんを頼って、どうするの! 私!

「あ、ううん。お疲れ様」

丁寧に頭を下げてオフィスから出てく斉藤くんの後ろ姿を、見送る。

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