生意気な彼は御曹司!?
宝石を散りばめたような都会の夜景に見惚れつつ、お互いの耳元で会話を交わす。
「それから、あれが……」
次に斉藤くんが指差した先に見えたのは、説明されなくてもわかってしまう有名なタワー。
「スカイツリー!」
はしゃぎながら大きな声を上げると、斉藤くんも白い歯を見せて笑顔を浮かべた。
なんだかすごく楽しいな……。
眼下に広がる夜景を眺める私の心臓が、ドキドキと大きな音を立てる。
初めての上空散歩にドキドキしているのか、それとも彼との距離があまりにも近過ぎるからドキドキするのか……。
感情が高揚していた私には、どちらなのかわからなかった。
夢のようなひと時が終わりヘリコプターから降りると、待機していたリムジンに乗り込む。
「初めてヘリコプターに乗ったけれど、すごく素敵で感動した。斉藤くん、ありがとう」
「先輩が喜んでくれて僕も嬉しいです」
東京の夜景を堪能し、興奮も冷めやらぬまま、向いのシートに腰を下ろしている斉藤くんに感想を告げた。
あんなに大きなヘリコプターの音が、リムジンのドアを閉めた途端聞こえなくなったことに驚いていると、斉藤くんは意味ありげに口角を上げた。
「先輩。僕の秘密知りたいですか?」
「ええ。知りたいわ」
「だったら、これからウチの別荘に来てくれませんか?」
「べっ……そう?」
「はい」
斉藤くんの謎がひとつ増えたことに驚きつつも、彼の言葉に頷いた。