暖かな陽光を受けて、桜の蕾が膨らみかけた祐里十八歳の誕生日の午後だった。

 祐里は、麗しく成長して、桜川地方では、祐里の嫁入り先が何処かの話題で

持ち切りになっていた。
  
亡くなった桜河濤子さまの遺言書が、顧問弁護士によって

旦那さまに届けられた。


【ユウリノ ケッコンアイテ キマル シキュウ カエラレタシ チチ】


旦那さまからの電報を受け取った光祐さまは、心臓が止まる思いがした。

 春の休暇で帰った時には縁談話はなかった筈なのに青天の霹靂の気分だった。

 取る物も取りあえず駅に行き、列車に飛び乗った。

 列車の中では祐里の結婚相手を暗中模索していた。

 帰る時刻を知らせていないにも拘らず、桜川の駅では森尾が車で待機していた。

 森尾も突然の光祐さまの帰省に固い表情をしていた。

 光祐さまは、父上さまの決意の固さを感じ、この最大の困難に思いを巡らし、

これから起こる事に立ち向かい、今回も必ず祐里を守り抜こうと決心した。

 もしもの時は、自分の祐里への想いを正直に父上さまと母上さまに話して

許しを請おうと思っていた。

 光祐さまは、車がお屋敷に到着するなり、

奉公人たちが出迎える間もない速さで、ただいまも言わずに

旦那さまの書斎へ駆け込んだ。

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