不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
◎ナンパ少年と入学式
*
今年の春。
家から近い位置にある、レベルもそれほど高くない普通の高校に入学することになった。
真新しい制服に身をつつみ、鏡の前で自分の姿を見る。
(ブレザー、可愛いかも)
上機嫌でリビングに向かえば、当たり前のように家のソファーに座ってテレビを見ている可愛い幼馴染がいた。
「おはよ、心。」
「あ、おはよう...って、なんで理来がいるの!」
「今日入学式だろ?一緒に行こうぜ。」
「え、あ、うん。」
そう、彼と私は同じ高校に入学することになっていた。
たぶん、理来も私と同じ理由で桜城高校を選んだのだろうと思う。
「お母さん寂しいわ、今日から心と理来ちゃんは家にいないんですもの。」
お母さんが寂しそうに呟く。
理来は 理来ちゃん と言われた事に反論していた。
「大丈夫だよ、夏休みとか冬休みには帰ってくるし。」
「でも寂しいわ。...2人とも、気を付けてね。」
「うん。」「わかってる。」
返事をすればお母さんは笑った。
もう一度いうが、今日は入学式。
そして、寮生活が始まる。
桜城高校は全寮制で、入学式の日から卒業まで寮に住まなければいけないのだ。
不安もあったが、楽しみでしょうがなかった。
初めて家から離れて生活するのだ。
門限は決まっているものの、ある程度自由にできる。
「心、顔キモい。」
ニヤけていると理来に指摘されて慌てて表情をもとに戻した。
時計に視線をうつすと、もうそろそろ家をでたほうがよさそう。
「お母さん行ってきます。」
「いってきまーす。」
「いってらっしゃい。」
リビングをでるときにわざと理来の足を踏んでやった。