テノヒラノネツ
「寒いだろ、手をつないで帰るぞ」

綺麗で優しい彼がそこにいて、昔と同じ言葉を千華にくれる。
千華は信じられない気持ちで一杯になりながら、差し伸べられた手に自分の手を重ねた
昔と変わらず彼の手は暖かく、昔とは比べられないぐらい大きくて、握り返す力の強さに驚き感動した。

「千華は変わらないな」
「……どこが?」
「手が冷たい」
「……」
「子供のときからだ」
「そうなの?」
「ああ」
「古賀君は……小さい頃から、あったかいよね」
「そうか?」
「うん……迷子になった時、祐樹君が手を引いてくれて、そう思った」

(この――――――てのひらの……熱が……切なくなる……)

千華は自然と彼の名前を呼んでいた。
いつも心の中では昔と変わらない呼びかけをしていたのだ。
時折、ふいに祐樹君と呼びかけそうになって訂正することも少なくはない。
今日もみんなの前では、思わず祐樹君と呼びそうになって、内心は慌てていた。

「……」
「なんか、懐かしいな」
この暖かさと―――彼の存在。
まるで時間をゆっくり巻き戻したかのような感覚。
嬉しくて切なくなる。
千華が作り上げた距離が、彼の方から近づいてくれた……。
だが、こんな切ない嬉しさも、ほんの数分のことだった。
次の瞬間、彼の言葉に、再び距離を認識する。

「千華に聞きたいことがあるんだが……」
「私に?」
「ああ」
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