テノヒラノネツ
古賀とはそんな約束はしていないのに。

「外出するなら、外でいろいろ片付けてもらいたいものもあるのよ。銀行も回ってきてほしいし、あ、大丈夫ATM機ですむことだからね。でも午前中にお願い。あと、お歳暮の手続き、内祝いの手続きとかも……むしろそういうことの方が手が足りなくて困ってたから、嬉しいわ」

とにかく明日の外出のことを問いただしたいのに、母親がペラペラと千華に指示を与えてくる。
「内祝い!? 産院でもらってきたカタログギフトじゃだめなの?」
「いろいろとうるさいお宅もあるのよ」
千華は呆然と立ち尽す。
彼は御馳走様でしたと云って、立ちあがり、帰宅すると言う。

「ちょ、ちょっと、古賀君……」

玄関に向う彼の後を追う。

「なんで? どういうこと?」

「そういうこと」

「な、なんで古賀君と私が出かけることになってるわけ?」
「別に彼氏がいるわけでもないだろ」

確かに現在フリーだけど。
なんでそういうことを云われなければならないのだと思う。
「何か問題でも?」
「私自身にはないけれど――――」
古賀君にはあるじゃない? と言葉を続けようとしたが、遮るように彼は云う。

「じゃあ、明日、迎えに行くから、寝坊しないように」

彼はポンポンと掌で千華の頭を軽く叩いて外に出ていった。
< 25 / 34 >

この作品をシェア

pagetop