テノヒラノネツ
テノヒラノネツ
食事を終えると、ブティックの店舗に移動する。
千華はカチっとしたスーツを選ぼうと、それらしい店に足を進めるが、古賀に腕を掴れた。

「何?」
「こっち」
「何よ、任せるって云ったくせに」
「こっちが似合う」
「……はいはい」
「こういう服が似合うの?」
鏡に当てて観てると、店員が寄ってくる。
「千華は嫌いか?」
「ううん。好きだけど」

(彼女の好みはどうなのよ?)

「御試着なさいますか?」
「着てみれば?」
「…………」
千華は複雑そうな顔をする。
彼はそんな千華の顔を見て、どこか楽しそうだ。
店員に試着室に案内されて、着がえて外に出てみる。
「良くお似合いですよ」
「はあ……」
千華は鏡の前に立つ。
鏡ごしに彼をみると、やはり彼は楽しげな表情をしている。
「古賀君はいいの?」
「千華が似合うなら」

(その基準は……果たして正しいの?)

「じゃ、いいみたいなんで……こちらでお願いします」
「はい。有難うございます」
千華が着がえてる間に、彼が支払いをすませたようだ。
「それに合う靴とバッグも揃えるか」
「あ、それだと喜ばれるかも」
しかし……千華は古賀を見上げる。
「古賀君」
「?」
「彼女の靴のサイズは? 服のサイズはあっても、靴のサイズは合わないわよ?」
「大丈夫」

(何故そこまで云いきれるの?)
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