テノヒラノネツ
彼はガンとして譲らない。

千華に服に合う靴とバッグを選択させて、支払う。
クリスマス限定のフレグランスも千華の好みに合わせていく。
千華はなんだか彼が自分の為に服もバッグも靴もコスメも選んでくれてるような、そんな錯覚に陥る。
でもこの状態ならそれも仕方ない。

(マイ・フェア・レディかプリティーウーマンか……ってカンジ)

「千華は、どこのブランドが好みなんだ?」
最後に宝飾ブランドが立ち並ぶフロアの前で云うのだ。
「……古賀君、彼女のブランドの好み……リサーチしてなかったの?」
「千華の好みでいいんだ」
服を選んでいる時点から、この会話が繰り返されてる。
「じゃあ……一般的なところは……こっちのショップ……可愛くて癖ないし……」

千華の指差すショップへ彼は入っていく。

「あ、えーと指輪? 付き合ってないんだよね……指輪はいきなりじゃ、相手びっくりするよ……」
「こちらのシリーズでしたら、アクセントもありますし。プレゼントとしても喜ばれますが。指輪と同じデザインでネックレスも取り扱っております」

店員がショーケース越しに、古賀と 千華に薦める。
店員に云われて、千華は古賀を見上げる。
確かにデザイン的には幾分カジュアル仕様で、色石がポイントに入っており……エンゲージとかマリッジには受け取られにくいデザインではある。
ネックレスの方も可愛い。

(……可愛い……コレ)

千華の心を読んだように、彼は店員に云う。

「じゃあ、これを。セットで」
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