「……わかんない」
「はあ?」
「よくわからないの……」

彼に会いたい。
話がしたい。
それは本当。
だけど……。

「アンタが今まで恋愛してきたのを見て訊いて知ってるけれどさ。アンタと付き合ってる時、アンタの彼氏達は、あたしに愚痴ってきてたわよ。『千華、ほんとうは別の誰かが好きなんじゃないかって』ね。だいたい、出かけるときにぐずぐず悩むのはいつも元、西南大付属の連中と逢う時って限定されてんのよ」

彼女はグっと人差し指で千華の鎖骨を押す。

「男と付き合いはじめて、デートするなんて時は、あたしのアドバイス無視して、ほんとテキトーにすましてるじゃない?」

ワードローブからあれこれと服をチョイスしながら、彼女は云う。
あんまりな云い方だ。
千華もそれなりにデートの時のコーディネートぐらいは考えていた。
だが確かに、高校の仲間に会う時は、その時以上に時間はかかる。

「どうなのよ?」

「……うーん……」

「あたしにも、幼馴染はいるわよ。同性だけどね。付き合い長いし波長は合うしで、不思議なんだよね。それがもし古賀君だったら、あたしは恋愛してるね」

「え? 古賀君のコト好きなの?」

「シチュエーションの話での仮定。あたし好きな人いるから。ま、片想いなんだけどね」

彼女は色合い、デザイン、千華のワードローブの中から千華に似合うものを選び、髪もきちんとセットしはじめた。
もう少し詳しく聞きたいところだが、そうこうしていると彼女の携帯電話が鳴る。

「あ、浅田君? ちょっと遅くなる。そう、千華のところ、揃ったら先にぼちぼち始めててよ。え? そーよ、オンナノコの支度はかかるもんなの、そんなことぐらいでぐずぐず云ってると、彼女に振られるわよ。うん」

彼女はちゃきちゃき答え電話を切る。
このさっぱりしっかりの彼女の性格は、3代続いた生粋の江戸っ子の性なのかもしれないと千華は思う。
髪のセットが終ったと手で合図されたので、千華はメイクを始めた。
メイクをすると、なんだか気分も華やかになる。
オフィス用よりも、弱冠、明るい色彩のルージュを引き、バッグを持って、友人と連れだって外に出た。