柾彦さまの恋
 
 その夜、子どもたちが就寝してから、光祐は、祐里に優しく声をかけた。

「祐里、何かあったの」

「いいえ・・・・・・何もございません。

 光祐さま、祐里は、いつもと違うてございますか」

 祐里は、普段通りに振る舞っていたつもりが、光祐に気付かれたことに困惑する。

「いや、いつもの祐里だよ。

 何もなければそれに越したことはないけれど、

ひとりで辛い事を抱え込む性分の祐里のことだから、

心配事でもあるのかと少し感じたものだから」

 祐里は、静かに光祐の肩に頭を擡げて寄り添う。

「ぼくの大切な祐里だもの、誰よりも祐里のことは分かっているよ。

 ぼくは、いつでも祐里を信じて見守っているから、

祐里が信じる道を行きなさい」

 光祐の言葉からは、深い愛情が感じられた。

「祐里は、光祐さまのお側に居させていただくだけで、しあわせでございます」

 祐里は、こころがしあわせで満たされていくのを感じていた。

「ぼくのしあわせは、祐里がしあわせでいてくれることだよ」

 光祐は、それ以上は何も追及せずに、祐里の肩に手をまわして、

力強く抱きしめた。

 祐里は、光祐の愛に包まれて自信を取り戻していた。

(光祐さま、祐里は自身を信じて、そして、柾彦さまを信じて、

いままで通りのお付き合いをして参ります)

とこころに誓った。



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