ナイショの恋を保存中!~クールな彼の恋人宣言~
デスクの上には図面や書類が乗っていた。

それらにはすべて付箋が貼り付けられており……

コピーしたものを宅急便で送っておいてと送り先の会社名が書かれてあったり、10時までに書類をお客様に届けに行ってと書いてあったり、図面を製本しておいてというメモもあった。

全部、簡単なお仕事。

誰にでもできる内容のもの。

挙句の果てに自分でやればすむようなことまで。


「谷本さん、この図面、あとで建築部の庄司さんに届けてきて」

「……わかりました」

「早めに頼むよ」

「はい」


毎日毎日、こんなふうにわたしの一日は埋め尽くされている。

そこから自分で時間を見つけて設計を覚えるべきなのだろうけど。

だけど、ようやく気づいた。

わたしにはそんなことを誰も求めていないんだって。

期待なんて実はぜんぜんされていないんだ。

社長の言う通りかもしれない。

楓ちゃんは入社当時から価値があったけど、わたしにはそんなもの、最初からなかったんだよね。

ただいいように扱われていただけ。
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