【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

4.体験レッスン - 恭也 -




冬のあの日から、
気になってた彼女。




彼女をずっと今日まで
遠くから見てた。






年上には
違いないだろう彼女。








普通に近づいても、
相手はして貰えないだろう。








勇生が貰ってくれた、
体験レッスンのチラシは、
あの日からある意味……
再会のための「お守り」のように
俺の机の引き出しに片づけられてた。





医学部に入学したら……
その時は、会いに行こう。





彼女が働く、音楽教室へ
彼女の生徒として。





彼女の生徒になるのが、
彼女を知るための
一番の近道になるような気がしたから。





待ち遠しかった……桜の季節。



入学式を無事に終え、
学生時代の延長戦で、医学部らしいことが
何一つさせて貰えない、
学校生活に慣れ始めた頃、
俺は再び、彼女の働く店へと足を向けた。







日曜日。




親には、雄矢と勇生と遊んでくるよって出掛けてきたのに、
ちゃっかり一人で、地下鉄に乗って商店街。





休みの商店街は、
人で溢れて賑わいを見せてた。





地下鉄の改札から、歩くこと10分。



チラリと覗いた携帯の時計は、
14時を告げようとしていた。





14時は午後の
最初のサロンコンサート。




運が良かったら……
彼女の演奏が楽しめるだろう。






お店の近くになると、
すでに始まっている演奏が、
商店街のアーケードに響いていく。



最初のアンサンブル。





少し足早にかけて、店内のドアを開けると
フロアーの一角で、間近で彼女の演奏を楽しんだ。




彼女の長い指先が、
美しく鍵盤の上を舞い踊るたびに
煌めくような音色が空間に広がっていく。






彼女のソロ演奏が終わって、
その後はエレクトーンのソロ演奏。





エンクトーンのソロ中、
一度ピアノの前から離れた彼女は、
スタッフさんと親しげに話しながら、
喉を潤してた。





再び、ステージに戻ってきた彼女は
ピアノとエレクトーンで、
あの有名なディズニーのメドレーを奏で始める。




店内にいる、学生たちは足を止め
子供連れの親たちは、
子供が『ミッキー』『ミッキー』っと、
はしゃいでるのを相手しながら、
その演奏に耳を傾けてた。



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