神の森

「運命的な巡り合わせ……

 母上さまは、とても素敵なお方ですね」

 美和子は、祐里の優しさにすっぽりと包まれたような気分に浸る。


「はい。祐雫は、よく母上さまにやきもちを妬いてしまうので

ございますが、お屋敷の皆は母上さまが大好きでございますの。

 母上さまが里に帰られてからは、お屋敷はとても淋しゅうなりました」

 祐雫は、遠くを見つめて、溜息を吐く。


「そのようでございますね。副社長も淋しげでしたもの」


だからその淋しさに入り込もうと美和子は思っていた。

 しかし、この写真の祐里は、写真の中にいても家族のこころを

しっかりと掴んでいた。


 美和子は、甘い香りに包まれてこころが穏やかになり、

すっかり光祐を誘惑する気持ちが失せてしまっていた。

 
 庭の桜の樹は、さやさやと微笑むように、お屋敷へ涼風を送っていた。





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