幼なじみの甘いレシピ
角砂糖いつつ


◇ side.Yui ◇



図書室の中は相変わらず静まり返っている。

あれほど愛してやまない本たちに囲まれているにもかかわらず、何か一冊選び出して楽しもうか、なんて気持ちすら今のわたしには浮かばない。


スマホの電源は、さっき切った。切れたのではなく、いったん切っておくことにしたのだ。もう少ししたら両親が家に戻るだろう。それまでに充電を使い果たしたくはないから。

あと少し。あと少しの辛抱だ……。わたしは冷えた指先に息をかけて、寒さをこらえた。


こんな場所にひとりでうずくまっていると、恐怖心はどんどん巨大化し、心をかき乱す。風の音も木の葉が揺れる音も、すべてが不気味なものに感じてしまう。


わたしは窓際に立ち、グラウンドの向こうにかすかに見える道路を眺めた。

流れる車のヘッドライト。……いいなあ、あの人たちは自由で。暖房も効いているんだろうな。

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