龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】

「志鶴――」

耳元で低い声が囁く。

わたしは両手を差し延べて、圭吾さんの首に手を回した。


また、夢ね


わたしは圭吾さんを引き寄せてキスをした。

ゆっくりと優しく唇を探られて、ため息が漏れる。


「ねえ、とってもかわいいキスだけど、起きて」


あれ? 夢じゃない?


「なぁに? 眠いわ」

「見た事のない男の子のイメージが君の中にあるんだけど」

「またわたしの心、覗いたの?」

「時々、勝手に流れ込んでくるんだよ」


わたしは目を閉じたまま寝返りをうって、圭吾さんの胸に頬を寄せた。


「どんな男の子?」

「中学生くらいかな。赤い何かを手にしてる」

「ああ……言ったじゃない。八幡神社で会った同級生よ」

「男の子だって言わなかったじゃないか」

「幽霊にまでヤキモチ妬く気?」

「もちろん」

「困った人。圭吾さんが一番好きよ」

「だといいな」

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