ティラント王国北部の国境付近にあるグレイズという比較的大きな街に、ディアンの姿はあった。


ディアンは最愛の少女がいると思われる宿場を、既に包囲していた。


深手を負った自分の魔物達が完全に回復していない事は承知していたが、国境を越えられれてしまえば救出は不可能に近いだろう。


国境の向こうは、イスランド王国の支配下である。


「精霊王、どうか僕に加護を」


そう呟いて、ディアンは指輪に唇を落とした。


「突入する!」


ディアンの合図で、宿屋の中に煙幕が投げ込まれた。


腰のサーベルを抜くなり、ディアンは先陣を切ってその中へと突入したのである。


風精を操り、煙幕を跳ね退けながら二階へと駆け上がったAクラスメンバーは、作戦通りに各部屋の入口にスタンバイするなり、合図と共に一斉に部屋へと突入した。


「刹那ッ!」


ディアンが突入した部屋が、どうやら当たりだったらしい。


ユリウスの身体にもたれ掛かった刹那の姿を捉えたディアンは、今までにない怒りに支配されていた。


愛しい少女は微動だに反応しない。


まるで、人形になったかのように。


「貴様ッ!」

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