今夜、俺のトナリで眠りなよ
 親父と、おふくろ以外の大人は好きじゃねえし。

 ま、俺が大騒ぎをしなかったせいもあって、いまだに兄貴は俺の背中の傷に弱いが。

 ちらりと見せるだけで、抵抗できない。負い目があるんだろ。

 俺が黙っているおかげで、今の地位があるんだぞ、ってな。

 兄貴と並べば、いつでも俺は悪者になる。

 そうやって生きてきた。本妻の子が正義、愛人の子が悪。

 それが俺と兄貴。

 本妻と愛人の差だ。親父が本当に愛していたのは、俺の母なのに。

 俺も母も、世間の風は厳しくて冷たかった。

 俺はフッと笑うと、髪を掻きあげた。

 兄貴は、ほんと……親父にそっくりだよ。

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