死が二人を分かつまで
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「あら、進藤さんこんばんは」


声をかけられた瞬間、彼は逃げ出しそうになった。

しかし、もちろんそんな感情はおくびにも出さず、完璧な笑顔で挨拶を返す。


「こんばんは」

「これ、回覧板ね。ドアの前に置いとくつもりだったけど、良かったわ、ちょうど会えて」


進藤の隣の部屋、303号室に住む川嶋という女性である。


推定年齢は50代前半。

会社員の一人息子は寮に入っているとかで、このアパートに夫と二人で暮らしていた。


偶然を装ってはいるが、きっと進藤の足音が聞こえたので部屋から出て来たのに違いない。


彼の部屋は角部屋なので、川嶋の部屋の前を通る者は他にいない。


「あ、そうそう。姪っ子が言ってたんだけどね」


来たな、と進藤は思った。


「今度、独身の人同士で集まって飲み会をするらしいのよ~。誰が参加しても良いんですって。進藤さんもどうかしら?」

「いや…でも、お友達同士の集まりなんじゃないんですか?」
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