死が二人を分かつまで



大きな紙袋を手に、広が仕事から帰って来た。


「あら、あなた。それ、どうしたんですか?」

「さとしにだ」


中に入っていた、綺麗に包装された箱を居間のちゃぶ台の上に置くと、広はネクタイを緩めながら腰を下ろす。


「まぁ。さとしちゃん、開けてみたら?」


知子や祖父母に見守られながらさとしが包装紙をはがし、箱を開けると、中から地球儀が出てきた。


「勤務先に、文具店の営業マンがカタログを置いていったんだ。子どもがいる奴はみんな注文していた。俺だけ知らんぷりしている訳にはいかないからな」


おもしろくなさそうな表情で広が解説する。


付録として「せかいのひとびとのくらし」という児童書と、プラスチックで出来た小さな飛行機の模型がついていた。


裏側にマグネットが埋め込まれていて、地球儀に貼り付けられるようになっている。


子どもが楽しみながら知識を習得できるよう、工夫されている教材らしい。
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