死が二人を分かつまで
*
大きな紙袋を手に、広が仕事から帰って来た。
「あら、あなた。それ、どうしたんですか?」
「さとしにだ」
中に入っていた、綺麗に包装された箱を居間のちゃぶ台の上に置くと、広はネクタイを緩めながら腰を下ろす。
「まぁ。さとしちゃん、開けてみたら?」
知子や祖父母に見守られながらさとしが包装紙をはがし、箱を開けると、中から地球儀が出てきた。
「勤務先に、文具店の営業マンがカタログを置いていったんだ。子どもがいる奴はみんな注文していた。俺だけ知らんぷりしている訳にはいかないからな」
おもしろくなさそうな表情で広が解説する。
付録として「せかいのひとびとのくらし」という児童書と、プラスチックで出来た小さな飛行機の模型がついていた。
裏側にマグネットが埋め込まれていて、地球儀に貼り付けられるようになっている。
子どもが楽しみながら知識を習得できるよう、工夫されている教材らしい。