貴方の愛に捕らわれて

龍二さんの優しい気遣いが嬉しかった。


差し出されたグラスをそっと受け取り、口をつけた。



喉を通るお水は冷たくて、とても美味しかった。



冷たいお水は渇いた体を、彼の優しい気遣いは心を潤してくれた。



コクコクと勢い良く飲み干す私に「おかわりいる?」といってニッコリ微笑む龍二さん。



この時、私は初めて龍二さんの笑顔を見た。



今までの龍二さんの笑顔は、顔は笑っているのに目がとても冷たくて、見ているだけで息苦しくなって怖かった。



けど、今見せてくれている笑顔は目もちゃんと笑っていて、まるでお伽話に出てくる王子様のようだ。



今までろくに男の人と、目を合わせたことすらない私には、この王子様スマイルはハードルが高すぎる。



恥ずかしくて真っ赤になった顔を隠すように俯き、ただ首を横に振って小さな声でお礼を言い、グラスを返した。



 

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