貴方の愛に捕らわれて

こんな酷い顔と最悪な気分でも、今日から始まるテストを休む訳にはいかない。



昨晩から何も食べていないけど、食欲がないのでホットミルクを口にして家を出た。





テストは午前中で終わった。



まっすぐ帰宅する気にはなれず、そのまま市立図書館へ向かった。



ここで閉館時間までテスト勉強をした。




図書館を出ると、外はすっかり真っ暗になっていた。



猛さんに、今週は会いに行けないと話しそびれた事を思い出す。





どうしよう…。




バイトはないけど、今週は会えないと言いに行こうか?



けど、別に毎日会う事を約束した訳でもない。



それに、昨日の私の態度に呆れて、もう会いに来てくれないかも……





そう思った瞬間、胸の奥がツキンと痛んだ。





あれ?


どうして猛さんに会えないかもって思ったら、胸が痛いんだろう?




猛さんとは、この2ヶ月ほど毎日合ってはいたが、特に親しく話しをした訳でもない。



毎日、ただ私の歌を黙って聴いてくれているだけ。




たまに私が話し掛ければ、一重の鋭い目を少しだけ細めて、優しげな眼差しで「そうか」って言ってくれる。




よく考えてみれば、私は猛さんのこと何も知らない……



猛さんにとって、私の存在ってなに?


ただの“顔見知り”?



 
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