貴方の愛に捕らわれて

「寒くないか?」



大きな手が、そっと頬を包み込むように触れる。



猛さんの手はとても温かくて、冷え切った頬をじんわりと温めてくれる。



『温かい……』



初めて感じる温もりに、無意識に頬を寄せる。




「……ッ…、飯食ったか?」



『まだです…』



優しく微笑む猛さんと目が合う。



やだ、私ったら猛さんの手に頬をスリ寄せちゃった。恥ずかしい。



頬が熱を帯びる。



きっと私の顔は、真っ赤だ。慌てて視線をそらして俯く。



「フッ……」



猛さんは小さく笑うと、頬に触れていた手が離れる。



あっ………



頬を離れた温もりに寂しくなったのは一瞬で、大きな手は優しく頭を撫でてくれた。



猛さんの大きな手に撫でられると、とっても幸せな気分になる。





幸せでフワフワした気持ちに浸っていたら、車はいつの間にか繁華街の中の一軒のビルの前で止まった。



 

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