それから幾日も過ぎて、大学の片隅にある俺たちの小さいサークル室に現れたのは、彼女だった。

くだらない話をしながら笑い転げているツレの間で、誰が置いていったか分からない漫画に没頭していた俺は、ふんわりと鼻をくすぐる匂いで、それが彼女だとすぐに分かった。


「――こんにちは」


一緒の楊子ちゃんが、相変わらず元気よく挨拶をする。後ろから、ひょこっと顔を出したのは思った通り、彼女だった。



あれっ……。

この間、暗闇だったからなのか、今日の彼女は違って見える。
いや、きっとちょっと痩せたんだ。

あの出来事が、彼女をそこまで苦しめたのか。相手の男が憎らしくなってしまう。けれど、同時に、彼女の真剣さに、やっぱりどこか安堵を覚える。そういう子なんだ、彼女は。

中途半端に、誰かと付き合ったりはしないような……。



たった数日――
彼女の顔を見なかったのは、たった数日の事なのに、すごく久しぶりな気がした。


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