約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く

25.私の世界を探して -花桜-



あんなにも帰りたかった現代。


私の居場所に戻ってこられたと喜んだのも束の間。

舞と瑠花の存在しない
この場所は……私が望んだ世界とは違ったものだった。



住み慣れた部屋。
見慣れた家族。


当たり前の生活。



望んだ世界と、何一つ変わらない日々なのに……
その世界に親友二人は存在しない。






……いつもと変わらないのに……。






ねぇ、舞……瑠花……。


二人は今、何処にいるの?



この世界に二人が生きた形跡がない。


だけど私の心だけは知ってる。



私は舞と瑠花と三人で、
あの幕末の世界にタイムスリップして
あの場所で出逢った人たちとずっと生活してたんだって。



それは誰に何と言われようと
私にとっての嘘偽りない真実。




目を閉じて思い浮かぶのは
私を子猫ちゃんと呼ぶ……お調子者の山崎さん。

いつも眉間に皺を寄せて気難しい土方さん。



後は……いつも優しい眼差しで
私を包み込んでくれる山南さん。



そして……あの場所で出逢った新選組の仲間たち。


洗濯を手伝ってくれる隊士さん。


私の剣の練習に付き合ってくれる人たち。


あの世界の方が……私、幸せだった。

大切な人がたくさんいる……守りたい人と出逢えた
あの世界が……。


思い返せば思い返すほど……
その心は募っていくばかりで今すぐにでもあいたくなる。




「花桜、練習始まるぞ」



勝手知ったる家。


敬里が声を出して部屋のドアを開けたのと同時に
私は飛び出す。


そんな私の腕をグイっと捕まえた敬里。



「おいっ、花桜何処に行くんだよ」

「図書館。

 調べたいものがあるから」



そう言って腕を振り解こうとする
私を片手で抑え込んで、額に伸びてくる敬里の手。


「熱……ないなぁー。
 お前、おかしいぞ。

 あの全国大会の試合の日から」

「うるさいなぁー。
 私はおかしくなんてないわよ」



おかしいのは……おかしいのはこの世界なんだからっ!!


一瞬、敬里の力が緩んだすきに敬里の頬を打ち付けて、
その抑圧から抜け出すと階段を下りて、玄関から慌ただしく外に飛び出した。



この場所に来た時……あの世界に最初に渡った時、
何が起きてた?

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