「な、なんのことでしょうか……わ、私には、わかりません」


万里子の動揺は明らかだ。声は震え、目は泳ぎ、顔面は蒼白である。これでは、肯定しているのも同然だろう。

そんな万里子に向かって、卓巳は容赦なく言い放った。


「忘れたのなら思い出させてやろう。君は高校生でありながら男に足を開き、妊娠した。だが君は、体内に授かった命を殺したんだ。渋江頭取は君のことを褒めていたよ。今どき珍しく清純な娘だ、と。それに、弘樹は君を天使のようだと言っていた。――とんだ堕天使だな」


それはあまりに辛辣な言葉。卓巳はわざと女性が傷つく言葉を選び、万里子にぶつけた。

血の気が失せていく万里子の顔を見ながら、卓巳は宗の調査に手抜かりがなかったことを確信する。


(何が“清純”だ。相手の男にも従順な顔で媚びたのだろう。一時の快楽に身をまかせ、子供など平気で殺す。それが女だ)


卓巳の胸には、長い時間くすぶり続けた燠火《おきび》があった。

万里子に対する苛立ちが、小さな火をおこし、燃えさかる炎となった。


「僕がなぜ君を選んだのか、教えてやろうか? 君がふしだらで汚れた女だからだ。僕は結婚する気はないし、子供を持つ気もない。だが、弘樹が言うような天使を妻にしたら……過ちを犯す可能性もある」


うなだれたままの万里子を、更に苛烈な言葉で卓巳は追い詰める。