愛を教えて

(6)回り道

万里子も自分の行動に驚きを隠せない。

わずかバスローブ一枚。裸に近い状態で、卓巳に抱きついている。しかも、激しい鼓動が収まらない。

それは恐怖から引き起こされたものではなく、恋がもたらす“ときめき”だった。


卓巳が胸の内で葛藤していたそのとき、彼女もまた、自らの過去と戦っていた。




四年前の夏、万里子は二人組の男に襲われた。

場所は、避暑に訪れた軽井沢の別荘。

そこには、父と家政婦の忍の三人で行くはずだった。直前に仕事の関係で父の合流が遅れたりしなければ……。

だがそこは毎年訪れる場所。とくに危険を感じることもなく、万里子は忍とふたりで先乗りしたのである。


事件はその、最初の夜に起こった。


犯人たちは、昼間に別荘が女ふたりであることを下見していたらしい。

深夜、ガラスの割れる音で万里子は飛び起きた。忍と一緒に恐る恐る一階へ下りてみる。道路に近い部分の窓ガラスが割れ、室内にはこぶし大の石が転がっていた。

ただの悪戯だろうと思ったところに、侵入者が姿を見せたのである。

六十近い忍を殴り、気を失わせたあと、通報できないように縛り上げた。犯人たちの目的は明らかに万里子だった。


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