愛を教えて

(8)卒業

三月半ば、聖マリア女子大学の卒業式が行われた。

聖マリアは入学式と卒業式には制服を着る決まりだ。

万里子も濃紺の制服を着て、その上から黒のアカデミックガウンを羽織っていた。フード付きのガウンは襟とフードの縁が白、そして大学名の入った黒の角帽を被る。

式のあと、聖堂で神に感謝の祈りを捧げ、卒業に関する行事はすべて終了したのだった。


「万里子さんはこのままお帰りになるのね」


聖堂の周りはアカデミックガウン姿の卒業生で溢れ返っている。万里子もその中にいた。


「はい。主人が車で待っていますので」


はにかみながら答える万里子に、友人たちは「ごちそうさま!」と声を揃えた。

ありがとう、お世話になりました、また会いましょうね、連絡してね、と言葉を交わしながら教職員や友人たちに別れを告げる。

そして万里子は卒業生の誰よりも早く、正門から外に出た。


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