君のための嘘

彼は何者?

******


「――帆さん、夏帆さん?」


身体をゆっくりと優しく揺さぶられて夏帆は眠りから覚めた。


「あ!は、はいっ!?」


目を開けるとぼんやりの世界で見えづらい。


手に持っていた壊れたメガネを急いでかける。


「夏帆さん、着きましたよ」


タクシーは停まっていた。


急いでタクシーから降りると、運転手がトランクから2つのスーツケースを出していた。


それぞれスーツケースを受け取ると、ラルフは建物の中へ入るよう促した。


「行きましょう」


スーツケースを持つ夏帆は、ホテルのような立派な建物のエントランスを見て足を止めた。


ここは……?ホテル……?


御影石の床はピカピカに磨かれていて自分の姿が映っている。


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