君のための嘘

彼の友人

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美味しくないはずの料理を、そんなそぶりも全く見せずに食べ終えたラルフは仕事に行く用意をしに部屋に行ってしまった。


夏帆が汚れたキッチンを片付けていると、ネイビーブルーの縦に細かいストライプに入ったスーツを着たラルフが現れた。


そう言えば仕事って、なんだろう……ロスで仕事と言うくらいなのだから国際的な仕事……?


どう見てもモデルにしか見えない。


でも、モデルだったらビジネススーツを着て出かけないよね?


ってことは会社員?


スーツ姿も似合うけれど……想像力豊かな夏帆はラルフに似合うのは、中世の騎士の服だと勝手に想像した。


「どこか変かな?」


そんな事を考えて、夏帆がクスリと笑いを漏らしたのを見て、ラルフは水色のネクタイに指をやった。


「ち、違うの、どこも変じゃない」


変なのは私の頭……だと思う。


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