君のための嘘

約束

リビングルームに入ると、ラルフはショートコートを脱いだ。


夏帆も機械的にコートを脱いで、身体の前で持つとラルフを見た。


「……ごめんなさい……こんなに親切にしてもらっているのに……」


ここまでくる間に、いろいろと頭の中で思いが駆け巡り、自分を元気づけようとしてくれたラルフは悪くなくて、苛ついてしまった自分が悪いのだと結論づけた。


そして、このままここに居てはいけないと。


「違う、僕がやりすぎたんだ」


リリさんに会うまでは、かなり元気になっていたと言うのに……。


表情には出さないが、ラルフは心の中で舌打ちをしそうだった。


「私、やっぱりここに居られないです……それで……ずうずうしいけれど、お金を貸して欲しいんです」


「夏帆ちゃん!?」


「ラルフさんに気を遣わせてばかりだし……彼女に悪いし……このままじゃいけないと思うんです」


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