君のための嘘

提案

ラルフはおかしなことを聞くと夏帆は思った。


ロスにも帰れず、霧生家に嫁がないのなら、日本で働くしかないのに。


「……バッグが出てくる保証はないし、もともと霧生家にお世話になるからって10万円しか入っていなかったけれど……働こうって決めていたんです」


スカートの皺を伸ばすように手で撫でつける。


夏帆はラルフの女性関係を知り、神経質になっていた。


「まだ働くには早いんじゃないのかな」


ラルフはため息を漏らす。


「そんなこと、言ってられないんです いつまでもお世話になっているわけにはいかないから」


「ひょんなことから君と知り合ったわけだけれど、君のことは嫌いじゃない むしろ心配で放っておけない それに履歴書も知らない子が働けるはずないだろう?」


「だから、ラルフに聞いているんです お願い 協力して欲しい」


これからの生活がかかっている。


夏帆は頭を下げた。


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