リアル
リアル5





とんとん、という音で隆は我に返った。


遥か昔の記憶だ。


忘れたくとも忘れられるわけはないし、忘れるつもりもない。


何時までも抱えていなくてはならない記憶なのだ。


十五年前のあの日、両親が目の前で殺された日の記憶。


再び扉が叩かれた。


薫だろうかと思いながら、隆は玄関に近付いた。


鍵を開けようとしたが施錠し忘れていることに直ぐに気付いた。


まあ、男の独り暮らしで危ないことなどそうそうない。


いや、あるのが今の世の中だ。


現に、家族三人が揃っているにも拘わらず襲われたのだ。


「はい」


だが隆は大した警戒心を抱かずに扉を開けた。


すると、そこには思いもよらない人物がいた。




.
< 98 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop