∮ファースト・ラブ∮
∮***出逢い
あれは真っ青な空に大きな入道雲が広がっているムシムシする夏の頃だった。
頭上には真っ白い太陽がギラギラとコンクリートの地面を焼き付けていく。
いつもの夏の昼間よりも数段ムシ暑い日。
当時、中学2年だったあたしは我(わ)が儘(まま)で、
自分の思い通りにならないことが大嫌いな小娘だった。
今から考えても、当時の自分には呆れ返ってしまうくらいヒドイものだったっけ……。
そんなあたしだから、お父さんとお母さんはいつもあたしの行動を心配していた。
なんたって、あたしは人魚一族の生き残り。
もし、あたしの起こした何かの行動で、
『人魚がこの世の中に存在する』なんてことが世界に知れ渡りでもしたら、
それこそ大変なことになる。
火の粉はあたしだけじゃなくて、
あたしたちの他に居るかもしれない人魚の一族にも関わってくる大切なことだったから。
それで、あたしは海に近づくことを許されなかった。
……んだけど…………。
やっぱり海に近づいちゃったの。
ほら、その日は猛暑で、水がとっても恋しくなるわけよ。
え?
家にいればいいじゃないかって?
あー、ダメダメ。
家に帰ったら、お父さんとお母さんのラブラブ姿を目の当たりにしなくちゃなんないのよ。
そんなの、ただでさえ暑いのに、もっと暑くなるだけだもん。
クーラーあっても、結局結果は同じことなんだもん。
お母さんとお父さん、あたしがちょこっと目を放した隙にイチャイチャしだすの。
こっちが見てらんないっていうわけ。
だから、あたしは外に出た。