受付レディは七変化。
2.ポリスは瞳を気にする
「お、お礼!!」

「え?」

「お礼しますから離して下さいっ!!」

そう言って、あのコスプレバーの窮地から抜け出した手前。

彼へのお礼はそれなりの覚悟をしていた。

なにかと人をムカッとさせる言動をする男なので、

何かと無茶なことを言ってくるんじゃ、と覚悟はしていた。

しかし、まさかこんなこととは思わず。

*

「すげ、アニメキャラばっかじゃん」

「・・・そりゃ、そういうイベントですからね」

私達は日曜日、会議場にきていた。特に仕事などではない。プライベートだ。

当然会社の会議室などではなく、広いフロアを貸し切った形の会場で、会議場という名前だが、どちらかというとホールに近い。

フロア内には、背景用の布が何種類もたてられており、その中で撮影をするピンクだったり青い髪の人たちや、ガラス張りの窓を背景に撮影する人々。
この極寒の中 肩を出したコスプレでデッキに出ている猛者もいる。

これはいわゆる、コスプレが趣味な人たちやそれを撮影するのが好きな人たちが集う、コスプレイベントというやつだ。

オールジャンル、という 露出度さえ守ればどんなアニメや漫画、はたまたオリジナルのキャラクターの格好をしても許されるイベントで、最近流行りのスポーツ漫画から大人向けのロボットアニメ、有名ゲームのキャラクターや小さい子供向けアニメのヒーローまで、様々な人たちが、好きな格好をして楽しんでいる。

私たちは受付を済ませたすぐ後であることもあり、そのままの格好をしているが。

「てか、麻綾ちゃんその格好でいいの?」

充永がなんとも言えない顔で私を見る。

「着替えますよ?あんな格好で外から来るわけ無いでしょう」
コレだから素人は、とため息をつく。
だが、このとき彼が言ってるのはそういうことではなく、 私服が超ダサいということを言いたかったらしい。(私服がダサイのも自覚済のため、特に問題はない)

「あ、そうなの?」

「はい、コレ持ってちょっと待ってて下さい」

そう言って一眼レフを渡す。コレを首から下げていれば大丈夫だろう。
こういうコスプレイベントで一人、コスプレもしてなければカメラも持っていない、では結構目立ってしまうものだ。ちょっと恥ずかしい思いをしてしまうだろう。
このカメラのおかげで、ただの撮影趣味の人だと思われるはずだ。

彼を目印の壁際に立たせ、じゃ、と手を降って私は女子更衣室へと急いだ。

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