リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
パスタの量はいつもの三分の二。
少なくした分、変わりにえのきを加えて。
具材はしいたけとしめじ、玉ねぎ。
目指すは和風パスタなので、味付けは醤油味ベース。
刻み海苔をかけたら、出来上がり。

それから、キャベツやにんじん、まいたけなんかを具にした野菜スープを作って。

ほい。
晩ご飯の完成。


ものすごく久しぶりに、本当に、いつ以来なのか判らないくらい久しぶりに、自分できちんと作った夕飯を、明子はリビングのローテーブルに並べた。

天板がガラスになっているテーブルの裏側に、『高杉兄弟』が勢ぞろいしている切抜きを入れたクリアファイルを、ペタリと貼り付けた。
それから、コンビニエンスストアの発券機で手に入れてきた舞台のチケットも、クリアファイルに入れて、天板の裏に貼り付けた。
そんなに期待はしていなかったのだけれど、インターネットで調べてみたら、予想していた以上にいい席で、気分はいっそう舞い上がっていた。
こうしておけば、その顔を見たさに、テーブルの上くらいは、いつでもきれいにしておこうという気持ちになれることを期待して、ペタペタと張り付けた。
それから、ダイエットの誓いも忘れずにいられることも期待して。
今の明子にとっての宝物を、一番よく目にする場所に貼り付けた。

彼らに向かって手を合わせて、「いただきます」と、明子は呟いた。


(いただきます、か)
(ちゃんと言ったのも、久しぶりだね)
(うん)


一人の食卓だったけれど、それでも気分は良かった。
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