リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
女の子のくせに、いつまでも結婚もしないで、こんな殺風景な部屋に住んでいる。
おそらく、姉から見たら理解に苦しむ、そんなどうしようもない妹に、自分は感謝されて当然の素晴らしい親切をしてあげている。
とっても優しくて、なんて女の子らしい素敵な私。
カーテンの件など、姉はそんなふうに考えて、自分に酔っていたに違いない。


(いっそのこと、姉さんの目の前で、こんなカーテンなんて思い切り破り刻んで、食器なんかみんな、叩き割ってやるべきだったかな)


押し付けられている姉の価値観に、自分がどれほどうんざりしているのか。
そこまですれば、姉にも伝わったかもしれない。


(いやいや、それはない、か)
(そんな殊勝な人では、ないな)


そんな妹の行動に驚愕の悲鳴を上げて、それから大げさに涙して、妹に優しさを踏みにじられた可哀相な姉へと変身して、母ともども明子を責めるに違いない。
そういう人だ。
そういう人たちだ。

外したカーテンにため息をこぼしつつ、明子の土曜日は始まった。
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