高天原異聞 ~女神の言伝~

2 蜜月


 誰かが自分を呼んだような気がして、美咲は半覚醒のまま目を開けた。

「――」

 薄ぼんやりとした部屋の中、すぐ近くに慎也の首筋と鎖骨が見える。
 小鳥のさえずりが聞こえた。
 そこでようやく、美咲は昨日の夜を思い出す。
 思わず身動いだとき、体の奥が甘い喜びで疼いた。
 慎也に抱かれたのは、夢でも幻でもない。
 優しく、大切に抱いてくれた。
 そのせいか、初めてなのに、痛みは驚くほど少なかった。
 まるで、何度もそうしてきたように。
 そっと顔を上げると、慎也は目を閉じて眠っている。
 無防備なその顔は、年相応のあどけなさが残る。
 今年で卒業とはいえ、まだ高校生なのだ。
 ほんの少し、後ろめたさが心をよぎる。
 小さく息をつくと、美咲は起きあがろうと静かに肘をついた。
 が、伸びてきた腕が美咲の首を引き寄せ、

「きゃあ!」

 美咲はまたベッドへと倒れ込む。
 すぐ傍には慎也の顔がある。



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