高天原異聞 ~女神の言伝~

4 女神の決意


「根の国の様子は、如何であった?」

「どうやら、黄泉神と手を組んだご様子」

「やはりな――」

 苦々しげに、女神は首を軽く振った。
 豊葦原を追われて後、かの女神はずっとこの時を待っていたのだ。
 いかなる御業か、太古の女神が黄泉返り、それとともに国津神が目覚めた。
 同時に、現世と失われた神代が再び重なった。
 美しき豊葦原の中つ国が、神霊の満ちる国が甦った。
 ここは神々の国。
 そして、かつて山津見の国津神の幸わう国だった。
 高天原より日継ぎの御子が、天降ってくるまでは。
 取り戻したいと願う心はわかる。
 我々国津神はこの地を愛するように定められているのだから。
 天津神々の領界である高天原は、我々とは異なる故に、未だ現世とは重ならない。
 同じ太古の女神から産まれながら、永遠に異なる――それが、国津神と天津神。

「闇《くら》に伝えよ。根の国の動きを引き続き探れと。この豊葦原は我々の領界。黄泉神の好きにはさせぬ」

「御意に――比売様、申し上げにくいのですが、一つお話が」

「許す、申せ」

 女神の美しい顔が怪訝そうに目の前に控える男を見下ろした。
 が、言霊を聞き、すぐに表情が引き締まる。






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