高天原異聞 ~女神の言伝~

2 へつ


 初めて出逢った時。
 美しい花が、咲き乱れていた。
 そこに佇む美しい女神。
 咲き誇る花よりなお美しいその姿を、忘れることなどできなかった。
 一目で心を奪われた。
 その容《かたち》も
 心《こころ》も。
 命《みこと》さえ。
 愛おしまずにはいられぬ者。
 ありのままの自分を、恐れずに受け入れてくれた唯一の。

 多くを望んだりしない。
 願いは、一つだけでいい。

 傍にいられれば。
 それだけで。

 この抗えぬ執着を、満たされぬ渇望を。
 鎮めてくれる、そなたがいれば。

 自分は他に、何も要らなかったのだ――







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