密会は婚約指輪を外したあとで
結婚願望

誰の目にも晒されない、二人だけの密室。


彼の長い指が婚約指輪に触れ、私の薬指から抜き取っていく。


それをテーブルへ乱暴に置かれても、咎める気持ちは微塵も湧き起こらなかった。



「兄貴とはもう、二人きりでは会うなよ」



微かな罪悪感と、抑えきれない彼への想いが交錯する。


彼の心が全て手に入らないと知っていても。

ほんの少しの間でいいから、私だけを見て欲しい。


明日、たとえ私のことを忘れても。

今この瞬間だけは──。




切ない吐息が、私のくちびるに届いた。




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