密会は婚約指輪を外したあとで
不実な恋



「お花、たくさん咲いてて綺麗だね」


道路沿いの花壇に植えられた色とりどりのチューリップを指差すと、一花ちゃんは二つに結った髪を揺らして、こくんと頷く。


「きれい。いちか、ピンクのお花、だいすき」


保育園まで一花ちゃんを迎えに行くと、先生には話が通っていたようで。怪しまれることはなく笑顔で見送ってくれた。


一花ちゃんもこの前とは違い、特に人見知りはせず、私と手を繋いでくれている。


帰り道にスーパーに寄って夕食の材料を買い、一花ちゃんは特別にプリンを買ってもらってご機嫌だった。


ただ、母親に連れられて嬉しそうに歩く子どもとすれ違ったときだけは、寂しそうな目をしていたけれど。
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