密会は婚約指輪を外したあとで

リビングで子ども番組に夢中になっている一花ちゃんを確認し、私は声をひそめてハルくんに問いただした。


「そういえば。この前私に嘘ついたでしょ」

「え、嘘なんてついたかな?」


彼は心当たりのない様子で小首を傾げた。


「お母さん、亡くなってなんかいないって拓馬が言ってたよ。私にも似てないって」


どこかでハルくんは、本当は純真な子だと願っていたのに、どうやら最初の印象とは違うらしい。


「あー、もうバレたの? ちょっと大げさに言った方が、なゆさん同情してくれると思ったんだよね」


悪びれなく、小さく舌を出したその顔も可愛くて、怒る気が失せる。



何だか、常にこの3兄弟に騙されている気がする。

私はようやく、彼らの本性に気づき始めたのだった。

< 75 / 253 >

この作品をシェア

pagetop