蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
第二章〜道たどり〜

再会

‡〜決意の過去を〜‡

”リュスナ・フォル・カルナ”

それが私の名前だった。
第五王妃であった母は、私が六つの時に亡くなった。

父である王は、戦争で国を手に入れるごとにその国で一番美しいと言わた女を妃にするような人だった。
何事にもすぐに興味をなくす飽きっぽい人で、当然のように妃にもすぐに飽きた。
飽きっぽいくせに欲が強く、手に入れる為には手段を選ばない人。
略奪と言うやり方でしか自分の世界を創る事のできない寂しい人だった。

きっと、一番父に似ていたのは私だろう。

他の兄姉達は気が弱く、何物にも受け身だった。

流されるまま。
そこに在るだけ。

私だけが異質だった。
誰にも興味をしめさない。
無感情で無関心。

けれど、唯一自分だけの世界が欲しかった。

私が存在する場所が欲しかったのだ。
見つけたのは城から少し離れた森の中。
そこで出会ったのは、美しい舞を舞う人だった。

”ラダ・クロスリード”

彼は美しい人だった。
金の髪、濃い翡翠色の瞳。
引き締まった肉体は、服の上からでも素晴らしい形を見せていた。
しかし、その見た目だけではない。
彼は、物言いは乱暴だが、知的でいて自身の中に広い世界を持った人だった。
私は初めて人に興味を持った。
何度もその舞を見た。
完璧に彼の舞を舞えるようになった時、初めて私と言う存在を世界に示せた気がした。
ラダは、剣術をはじめ、ありとあらゆる闘う術を教えてくれた。
そして、気付いたら私は”王の騎士”になっていた。
父が私に利用価値を見出だしたのだ。
特にその時思った事はなかった。
ただ、確かな地位に着いた事で、面倒な事にならなければいいと思っていた。

城に閉じ込められていた以前とは違い、王の行く戦場にも共に付いていく事が多くなった。
そしてようやく民達の現状を知った。
私は外の世界を知った。

書物や人伝に知識はあっても、実際に目にすることがなかった現状。
民を救済しようなどと思い上がった考えをもったわけではない。
ただ私が嫌だったのだ。

荒廃した街を見たくなかった。
王族を憎む彼らを見たくなかった。
これ以上父に食い潰される国を見たくなかった。
だから決断をした。
王族を滅ぼそうと…。

この時師匠が側にいたのなら、違った結末があったかもしれない。
けれど彼は、放浪の旅に出てしまっていて…。
私は遂に最期まで再会することはなかった。


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