バーチャル歴史的愛情故事
第弐章□同じ部屋
恋人にフラれてヤケになってゲームやろうとしたら画面が光って知らない世界に飛ばされて結婚を迫られて…
有り得ない速度で物事が進む。
「散歩っつったってここ知らないし…」
青葉城と呼ばれる城の中をあてもなく歩く。
「そうだ、携帯で調べれば多少はこの城の構成がわかるかもしれない」
ポケットに手を突っ込む。
「……………………あ」
美濃は携帯を持っていなかった。
携帯どころか、着替えも化粧道具も何もかも持たない状態で飛ばされてきたのだ。
「…最悪…これじゃ友達に助けも求められないじゃない…」
ガックリうなだれる美濃。
ふと、背後から声をかけられる。
「見慣れない顔だね」
「へっ」
驚いて振り返ると、真っ白な白髪、それも腰まである長さで、加えて綺麗な目をしていて端麗な顔立ちの男が居た。
「君が、政宗が言っていた美濃かな?」
「あっ、はい…」
「僕は明智光秀。よろしくね」
明智光秀!?
「え、え?」
「みんなとは違う見た目だから驚かせちゃったかな、ごめんね」
そう言ってふわり、と笑う光秀に美濃は心臓をドキドキ言わせた。
綺麗な顔。
それでいて柔らかそうな雰囲気。
歴史の本で見た明智光秀とは大違いだ。
「政宗の正室になるんだって?」
「あ、いや、それはその!まだ会ったばかりですし私はその話にまだ混乱してて…」
「なんだ、残念。君なら素敵な正室になれると思うんだけどなぁ。あの暴れん坊な政宗をも見とれさせてしまうほどなんだから」
「は、はぁ…」
嬉しいような、悲しいような。
「僕はこの城に住んでるから、困ったことがあればなんでも言ってね」
「あ、有難うございます…」
と、そのとき、違う声が聞こえた。
「光秀、何をしているの?」
「あ、謙信様…」
「私を置いていくなんて。探したよ」
「すみません…さぁ、戻りましょう。先ほど新しい琵琶を調達したので謙信様に弾いていただきたいと思ってまして」
「それは嬉しいね。では、行こうか」
「?????????」
美濃はその光景を見てるだけ。
「あ、光秀、この女性は?」
「政宗が言っていた美濃という者です」
「は、はじめまして…」
「はじめまして。私は上杉謙信。光秀とは恋人の仲だから。よろしくね」
「こっ…!?」
「さぁ、行きましょう謙信様。僕は早く貴方に琵琶を…」
「わかったよ。じゃあまたね、美濃」
謙信はふにゃっと笑うと、光秀の肩を抱いて奥の部屋へと消えていった。