あいなきあした

4章

「もしもし、サンタさん?」
年に2回、俺はサンタクロースになる。実の娘を『ママ』に連れ去られ、絶縁状態の父娘ではあったが、実家の固定電話の番号と、受話器を取ってくれるお約束を(ワンコールで切り、再度コールをするという方法)知っていたので、家に娘だけが居そうな時間を見計らって娘と通話することは、かろうじて俺は自称サンタクロースという設定で、年に2回、誕生日とクリスマスには、娘のもとに届くかは分からないプレゼントを贈っている。
「えっとねー、くるみ、キュアシャイニーのお人形。」
娘も成長につれ、嗜好が変わり、アンバンマンからプリキュアへと、興味の対象が変わってきているようだ。
「わかったよ。サンタさんの荷物が着いたら、ママとおばあちゃんには秘密にして、隠しておくんだよ。」
金を稼いでくるだけの人形に過ぎなかった俺のことが、どうして憎いのかは想像することは出来ないが、きっと俺からのプレゼントなど見つけようものなら、婆は卒倒し、元妻は過呼吸でも起こして、パニックにでもなるのだろう。荷物の期日と時間の指定を行って、携帯電話をワークシャツの胸ポケットに放り込む。クリスマスまであと2ヶ月だ…。
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