竜王様のお気に入り
昔語りと危険な興味
遡ること遥か遠く。

まだ人間も文明を持たず、自然と協和して暮らしていた頃。

天界と人間界の隔たりはなく、龍族達は人間界によく姿を現していた。

龍族の最高位は勿論“龍”である。

長大な肢体を輝くばかりの鱗で覆い、まさに荘厳と形容するに値する。

よくおとぎ話に出てくるような、口から火を吹く悪の権化、いわゆるドラゴンではなく、神獣として崇められる龍だ。

しかし、龍の一族ではない、物の怪じみた者達であっても、龍族の一員として天界に居を置き、竜王陛下に従っていたのだ。

時の竜王は、サファイアの如く青く輝く、青龍であった。

この頃の天界では、みな本来の姿のままで、思いのままに暮らしていた。

< 106 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop