イベントが終わり、雲の上を歩くような心地でホテルに戻った。

「終わっちゃったなあ」

想像していたよりもずっとずっと素敵な人だった。

終了後、出口で三神さんが一人一人と握手して御礼を言ってくれたのだが。

「私、何言ったっけ」

多分、

10周年おめでとうございます。
福岡からきました。

この二つは言えたと思う。

握手の時、凄く見上げたような気がするので、背も高かったに違いない。

ありがとう、の言葉に完全に舞い上がって、その後どうやって帰ってきたやら。
三神さんの手の感触なんか全然残ってない。

思い出そうと思ってもいろんな気持ちがごちゃごちゃで、軽いパニック状態のようだ。

何をしたらいいかわからない。
でも何かしなきゃ。

「そうだ、メイクを落とさなきゃ」

鏡に映った自分は 別人のままで、それも現実に戻れない原因なのだと思った。

早く。

夢から覚めなきゃ。

アイメイクを落とすのに苦労したが、何とか終了して鏡をみる。
見慣れた私がきょとんとしていて、少しほっとした。

ただいま、と笑う。

お風呂に入ろうかと思ったが、まだ20時を過ぎたばかりだ。
絶対今夜は眠れないだろうし。

「ラウンジでコーヒーでも飲もうかな」

折角のクラブフロアなんだし。
もしかしたらスイーツが残ってるかもしれないし。

ここのケーキは美味しいと評判なのだ。
残ってますようにと思いながら、私は部屋を出た。