アラサーだって夢をみる

スイートルーム、そして


連れて行かれた先は最上階。

フロアの半分以上の面積を占めるプレジデントスイートだった。
確か1泊、諭吉さんが100人以上。

「うわ、広いですねぇ」

「だろ?」

三神さんが肩を竦める。

入った途端、何かのホールかと思うようなリビングで、真ん中に20人くらい座れそうなソファーセットがある。

ちらっと見渡しただけでドアが5つもあるし。

ここに一人はさすがに落ち着かないだろうと思った。
二人でも似たようなものだが。

三神さんは少し奥の、これまた立派なアンティーク調のダイニングテーブルに座り、早速ルームサービスのメニューを眺めている。

(まあ、そうだよね)

気付けばもうすぐ22時。
レストランじゃゆっくり食べる時間もなさそうだ。

必然的にルームサービスの食事になるよね。
どっちにしても三神さんの部屋に来る事になってたのよね。

そうやって無理やり自分を納得させて三神さんの向かいに座ると、メニューを渡された。

さすが都内屈指の高級ホテル。

値段も相応の設定で、自分の予算内のメニューを探していると

「俺がご馳走するからね?」

何でもどうぞと言われた。

「いえ大丈夫です」

さすがにそこまで甘えられないし。

「俺が付き合ってもらってるんだからそれくらい当然だろ?」

そう言われて気が引けたが、あまり固辞しても可愛くない。

「ありがとうございます」

素直に礼を言って、ビーフシチューと季節のフルーツ盛り合わせを頼んだ。
三神さんもビーフシチューが美味しそうだと言い、さらにクラブハウスサンドも注文している。

「フルーツは一緒に食べましょうね」

うんうんと微笑んでいる三神さんは何だか本当に嬉しそうで、来て良かったと思った。


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