そうと決まれば聡の行動は早かった。
善は急げとばかり、その日のうちに婚姻届を提出したのだ。


「そりゃあ、また……凄い進展だな」


週明けに事務所で結婚の報告を聞き、如月は開いた口が塞がらない。

驚いたのは事務所のメンバーも同じだ。

しかも夏海の子供の父親が聡だと聞き、状況がさっぱり判らない。

だが、『道理で……最近、一条先生が丸くなったと思ったんだ』とひとりが言い出すと、


「上機嫌だもんね。やたら仕事も取って来なくなったし」

「そうそう。こないだも、クライアントにゴールデンウィークはない、とか言って休み返上したくせにね。盆休み用のグアムやハワイ旅行のパンフレット見てるんだもの」


派遣たちは一様に声を上げて笑う。

その中で、『それならそうと、言っておいてくださいよ』などとひとりブツブツ言ってるのが、夏海と同じ年齢の安西弁護士。

安西は夏海が入ってすぐ、うっかりランチに誘い、おまけにデートまで申し込んでしまった。
それが聡の耳に入り……後は言わずもがな、である。


如月が相手なら直接文句は言えず、夏海に嫌味を言う程度だが、安西となると話は別だ。
チクチク苛め続ける聡に夏海は眉を顰め、彼女のほうから安西に近づかないようにしたのだった。


周囲は、かつての恋人が自分の子供を産んでいたことを知り、結婚を前提で入社させたのに違いない、と聡にとって都合よく誤解した。

『ピエロみたいだ』と愚痴る安西を『まあまあ』と皆が宥め……概ね、全員に祝福して貰えたのだった。


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